トルコと欧州連合(EU)との関係
ここ1年の間、トルコ外交で大きな変化が見られたのはロシアとの関係である。
2015年11月24日のロシア機撃墜事件で両国関係は悪化したが、2016年6月29日に関係を改善して以降、緊密な関係を維持している。
ロシアとの関係に匹敵するほど大きな変化が見られたのは、ヨーロッパ連合(EU)との関係である。
(中略)
2015年の夏から大量の移民が流入するようになり、各国で大きな混乱を経験したEU諸国、特に多くの難民が最終目的地として目指したドイツにとって、移民の防波堤としてトルコは協力が不可欠な国家であった。
(中略)
トルコとEUの関係は良好なものになることが予想されたが、この1年間でその関係はむしろ後退したと言えるだろう。
その原因は大きく2つある。
まず、EU側が約束したトルコ国民に対するEU加盟国へのヴィザなし渡航の自由化が2017年2月現在でも実現していない点である。
2つ目の理由は、トルコにおける2016年7月15日クーデタ未遂事件以降、エルドアン大統領および公正発展党が国家非常事態宣言下でクーデタ未遂に関与した人物を徹底的に排除する動きを強めたことである。
引用元:ニューズウィーク日本版
トルコ欧州連合(EU)難民協定
そもそもトルコと欧州連合(EU)は、中東からの…特にシリア難民への対策として、2016年3月18日にトルコと欧州連合(EU)は協定を結び、
トルコ側は、
- ギリシャに不法入国した難民をいったんトルコが全て受け入れる
- ギリシャに滞留している難民は登録を受け、庇護申請をギリシャ政府に提出する
その中に含まれるシリア人と同じ人数のトルコに留まるシリア難民を、EUが「第三国定住」の形で受け入れる - トルコとギリシャ間の国境監視を(トルコが)強化する
と決めました。
一方欧州連合(EU)側は、
- トルコ人にEU加盟国のビザなし渡航の自由化を2016年6月末までに実現するよう努める
- トルコ国内のシリア難民支援に2016年3月末に30億ユーロ、2018年末までに新たに30億ユーロ、合計で60億ユーロ(約7800億円)を支出する
- トルコのEU加盟交渉を加速させる
ことなどを約束しました。
トルコ・欧州連合(EU)双方の主張
トルコ側としては、トルコが1~3番まで約束通りすべて履行しているのに対し、欧州連合(EU)側は1番も3番もぜんぜん進んでいないじゃないか!
となる訳です。
一方で欧州連合(EU)側はEU側で、トルコは対テロや自由化に対する協力改革が不十分で、逆にエルドアン大統領の強権姿勢が目立ち、現に非常事態宣言化で国民の自由は著しく制限されているじゃないか!
まずはそれが為されてからのビザなし渡航だ!
と言っています。
こんなことですから、トルコと欧州連合(EU)の関係悪化は2017年になっても関係改善の兆しを見えていません。
現に欧州議会のトルコ担当者も「トルコの現状は悪化している」との見解を示し、EU加盟交渉は前進していないどころか、昨年11月の欧州議会ではオーストリアを中心にトルコの加盟交渉を凍結する決議を賛成多数で可決するなど、むしろ後退しています。
欧州連合(EU)側は特に、
- 報道の自由への侵害
- 国家非常事態宣言
を批判しています。
トルコの事情
いやー上記はこの通りなのでぐうの音も出ないですが、トルコにはトルコの事情がありますからね。
今は多少落ち着いていますが、2~3カ月まではテロが相次いていました。
トルコは欧州とは違い不安定ですからね。
ある程度は仕方がないでしょう。
(フセイン大統領時代のイラクは地域大国で、比較的政治も治安も安定していましたが、今はもうボロボロ)
どうなる今後のトルコとEUの関係
欧州連合(EU)側のあまりな対応に、とうとうエルドアン大統領は難民の取り締まりの拒否に言及。
トルコが対欧州連合(EU)への難民対策を止めたら、難民が欧州に雪崩れ込み、EU各国の現政権は選挙で総崩れ。
右派政権樹立、という展開が簡単に予想できるのですが、どうするのでしょう。
そしてエルドアン大統領はさらに、さすがにそれはちょっと…と思うロシアと中国が主導する上海協力機構へ鞍替えする可能性にも言及するなど(エルドアン大統領は正規加盟を要請、全参加国の中で唯一のNATO加盟国であり、現在は対話パートナー資格国)、EUを牽制しだしました。
追い詰めすぎると、どちらにとってもlose-loseな関係になるかと思うのですが…。
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